2013年11月14日木曜日

きっかけはイルカとの出会い 南房総の海の魅力とは

特集01

きっかけはイルカとの出会い 南房総の海の魅力とは
シックスドーサルズ・カヤックサービス 代表 藤田 健一郎氏
 
 
関東のなかでも豊かな自然が残る南房総。
その美しい海域にはイルカやクジラ、ウミガメなど様々な生物が棲み、とくに海や海岸に暮らす生き物の生態を知るには最適な場所だ。
「シックスドーサルズ・カヤックサービス」の藤田氏は、1998年よりシーカヤックを楽しみながら豊かな自然に触れることのできるサービスを提供してきた。
2011年の東日本大震災からサービスは休止しているが、現在も南房総の季節ごとの自然の変化などを調査・研究し続けている。
 

第三者の目線から海と海辺を見続ける

 

波打ち際から漕ぎ出せば、カヤックはあっという間に沖合まで進んでいった。
当日は風がかなり強く、波は若干高め。
「初心者では難しい天候。
もし通常営業していても、今日はカヤックツアーの営業はできないですね」というのは、シックスドーサルズ・カヤックサービスの代表である藤田健一郎氏。
そんな悪天候でもベテランのなせる技か、藤田氏のカヤックは気持ちよさそうに海面を滑っていく。
 
藤田氏は20年前に、東京から妻の実家がある南房総へ移住してきた。
当時23歳の藤田氏は、はじめは大工などの仕事に就き、何とか南房総での生活に根を下ろそうとしていた。
カヤックに出合ったのは、さらにその1年前の小笠原。
そのときはクジラが見られるからという理由で乗りたいと思った。
しかも初体験ながら、案外わけなく沖まで行けたが、クジラを見ることはできなかったという。
「館山に移住して5年ほど経った頃に、洲崎でもイルカが見れるという話を聞いたんです。そこでカヤックで初めてイルカと対面。その感動があったから今もこの仕事が続いているんだと思います」と藤田氏。
 
そこからカヤックサービスを始めるまでに、迷いはなかった。
「カヤックを通して、クジラやイルカという魅力的な生物に出合えたことが大きかったですね。とくに南房総では私がカヤックサービスを始めたころ、同業は鴨川の方に1軒だけでした。内房ではこんなに美しい海があるのに、それを知らせるサービスがないなんて、もったいない」と感じたことが大きいという。
南房総は風が当たりやすく潮の流れが速めで、初心者にとっては若干カヤックをするには難しいそうだが、まだ手つかずの自然海岸も多く、その砂浜の美観やたくさんの海の生物たちに出合える機会も多い。
 
「何よりそれを地元の方々に見てもらいたいと思っています。実はこの20年間で、海辺はどんどん整備されてしまい、南房総の自然環境も変化を余儀なくされています。地元に長くいればいるほど、美しい海辺は当たり前のものになってしまい、利便性を優先させてしまう傾向があります。仕方のないことですが、そのために私のような外部の人間が第三者の目線からその自然海岸を知っていただくように活動し、その保全の重要さを確認いただくことが大切かと思います」
 
例えば南房総の砂浜には、西日本の一部では絶滅したとされるスナビキソウが生えている。
スナビキソウは海岸の砂丘と砂浜の境目に生える植物で、海岸道路や堤防などで整備された砂浜では確認することができない。
スナビキソウが生えていることで自然の砂浜であるかどうか、その指標にもされている植物だ。
「スナビキソウには、アサギマダラというチョウが集まってくるので、スナビキソウがなくなればチョウも来なくなり、そこで生態は変わってしまいます。アサギマダラに識別番号をつけ、その飛来過程やスナビキソウの分布を全国で情報共有することで、海岸の変遷を見守り続けています」と藤田氏は語る。
 

私たちの日常を自然の立場から考える

 
現在カヤックサービスこそ休止中だが、藤田氏の活動は幅広く、カヤックを通した生物調査のほかに、前述のような海浜植物や漂着物の観察なども行っている。
それらはビーチコーミングと呼ばれているが、海岸美化のほかに二枚貝などの貝殻やクジラの脊椎など、近隣の海の生態を知る手掛かりにもなっている。
 
「一言に漂着物といっても、海には本当に様々なものが流れ着いてきます。そのなかには〝お気に入りのゴミ〟もあるかもしれないですし、ときに大きな発見もあります。時間と気持ちに余裕があれば、ぜひゴミを拾って歩いてみてはいかがでしょうか」と藤田氏は勧める。
 
なかにはストランディングという、別の〝漂着物〟に出合うこともあるという。
「ストランディング(stranding)とは、海(または水)の中にあるべきものが、岸にのり上げるという意味があり、哺乳類や魚類をはじめ、死体が漂流して打ち上がることをいいます。ビーチング(beaching)という用語を使う場合もありますが、日本語では前者を座礁、後者を漂着とすることもあるようです」と藤田氏。
 
海岸をそうして日々隈なく調査・観察していれば、そうしたストランディングに対しても、いち早い対応ができるだろう。

 
さらに藤田氏はより多くの人々に海辺の自然に触れる機会を増やし、自然について考えてもらうため、南房総での活動を大学の講義でも学生に伝えていた。
「人々が目線を変えて、自然側から自分たちの生活を見れるようになれば、自然の立場に立った視点をもてるようになると思います。一人ひとりの生活から自ずと自然を考えられるようになってもらいたいですね」次世代の育成も、藤田氏の今後の大きな目標だ。
 
 

『自転車砂浜ツアー』
太平洋に面した広大な砂浜を、マウンテンバイクを足として親しみ、各所で自然観察、ビーチコーミングが体験できる。
参加は2人から最高4人参加までの少人数、1グループ制。
そのぶん仲間内だけで気兼ねなくマイペースに楽しめるのがうれしい。
ツアー詳細は10月末までに、シックスドーサルズ・カヤックサービスのHPにて案内予定。
興味のある方はぜひチェックを。
 
お問い合わせ:シックスドーサルズ・カヤックサービス
住所:千葉県館山市塩見118-7
TEL:0470-28-1961

館山・白浜・千倉

オニオン記者投稿

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